「シニアピアノ教育」のメソードも指導書もないので、自分で調べることにしました。
まだ論文の書き方も知らないとき、一人で図書館に通って書いたレポートです。
このプロセスがとても楽しくて、大学院に行くことにしました。
高齢者のためのピアノ教育メソード -理論と実践からの構想- 修士論文 聖徳大学大学院 |
初心者の子ども(幼児)・前期成人(大学生)・後期成人(60歳以上)の3つのグループに、
同じ内容の6回講座を開いて演奏能力を比較し、それを基にメソードを構想。
【Findings♪】
演奏能力のほとんどは、前期成人を頂点にして、山形に低くなっていました。
でもでも、練習を最も長い時間がんばったのは、後期成人(60歳以上)!各年齢ならではの特徴が。
仕事も家庭もあることから、家から一番近い「音楽教育専攻」のある大学院に行ったのですが、
そこの指導教授や仲間との素晴らしい出会いがありました。
論文の書き方や研究のイロハを教わり、適格なご指導で研究の面白さに開眼。
生涯学習の観点からもシニアピアノを考えてみたくなり、指導教授の母校に行くことになりました。
60歳以上成人を対象にしたピアノ教育 -年齢層ごとの特徴を中心に- 修士論文 お茶の水女子大学大学院 |
特に年齢層ごとの相違に注目して、シニアは何を求めてピアノを学ぶのか?学びの意味を、発達段階論・ニーズ論・エイジングなど様々な理論から、また実践でのインタビュー分析などから研究しました。
【Findings♪】
シニアのピアノ学習者は、「素敵な演奏」を求め続けると思っていたのですが、
ナント、「素敵な人生」を求めるようになることがわかりました。
素敵な人生とは具体的に、次の3つが健康な人生です。
「心が健康」……心の豊かさ・楽しさ・生きがいなど
「脳が健康」……脳活性・認知症予防
「体が健康」……指の機能維持、何歳までも元気でピアノ教室に通うことなど
「高齢者も成人である」とする成人学習論(ノールズ)の理論が、現場で実際にシニアに教えていて実感することと微妙に、いえ、だいぶ違う……と感じて、もっと高齢者に特化して考えてみたいと思っていました。また通学時間や色々なことから、家の近くの大学院の高齢者ケアリング学分野で研究しました。
高齢者のピアノ学習が 心身の健康状態に与える効果に関する研究 博士論文 筑波大学大学院 |
お茶の水女子大学大学院修士論文で明らかになった「3つの健康効果」の検証をしました。
【Findings♪】
・心の健康……ピアノ講座の応募者は、心の健康度がもともと高い人たちなのですが、5回講座を受講することで、それがさらに高くなりました。
・体の健康……6回のピアノ講座を受ける前より後で、指の機能が向上しました。特に動きの遅い左手の薬指-小指で、より顕著でした。
・脳の健康……脳活性や認知症予防を目的とする場合は、ピアノなどの楽器演奏の方が歌唱より効果的なことが解りました。
ここでは、医学や統計解析の知識がずいぶん増えました。
「一人でも多くのシニアが、ピアノで幸せになること」を願って、
この研究をさらに発展させられれば…と思います。