84歳で、生まれて初めてピアノを習いました。
シニアレッスンの楽譜は、同じ曲でも「普通版」と「少し難易度の高い版」を用意して、各自が自分で選択しています。皆さん実力以上の「長かったり難しかったりの版」を選ぶ傾向にあります。
しかしまっちゃんは、決して背伸びすることなく、自分の力にちょうど合った曲を選びます。そしてそれがまた、な〜んとも味がある魅力的な演奏なのです!
無理して弾いている「長い曲」「難しい曲」よりも、余裕で弾ける曲を完成度を高めて演奏をする方が、聴く人の心にずーっと伝わるものがあります。
「人より難しい曲でなけりゃイヤだ」「クラスで一番でなきゃイヤだ」
というような生徒よりも、
「難しいのでなくても、自分の実力相応の版を、楽しく弾こう。」
「クラスで一番でなくてもいい。自分らしく、マイペースで楽しもう。」
・・・そんな姿勢の生徒が、長続きしているようです。
こんな歌が流行りましたね。
「♪ナンバーワンでなくてもいい。世界で一つのオンリーワン♪」
しかのさん(90歳)
ちーちゃん(79歳)
車のついたバック(カートっていうのかしら?)をゆっくり押しながら、教室に入門していらっしゃいました。
お仲間(まだ60代)から聞いた話です。
「レッスン時間より早く着いたのだけど、すぐに教室の中に入らず、時間まで家の前で行ったり来たりしていたんですよ。」
ああ、なんという謙虚さ・・・。
寒いのに・・・。
以前、子供に教えていた頃は、遅刻が多かったり、反対にレッスン時間より30分も早く子供を降ろして自分は買物に行ってしまうお母さん・・・色々いらっしゃいました。そんな若いお母さんとは大違いです。
地域の交流会があれば・・・折り紙で折ったコマを紹介して下さる。
作曲者について調べてくるようにという課題を出すと・・・図書館でシューベルトの本を1冊借りてトコトン調べる。
前向きで、謙虚で、一生懸命で、とてもおシャレなちーちゃんです。
大ちゃん(78歳)
シルバークラブ・詩吟・ゲートボール・高齢者体操教室・ボランティア・パソコン・・・と、積極的に活動。
活動的なだけでなく、ピアノひとつ取っても、その取り組み方が実に一生懸命なのです。
「毎日、2時間しました!」
すごい!子供の生徒だって、2時間練習してくれる子はなかなかいません。
だいちゃんを教えていると、私まで「頑張らなきゃ!」と元気が出てくるのですから、
何だかパワーを分けて頂いているようです。
もし私がこの年齢になったとき、こんな風に物事に対して積極的でいられるでしょうか?
今でさえ、甘えの気持ちがすぐ出てしまう怠け者の私は、ただただ頭が下がるばかりです。
【優しいシニア】
子供にグループレッスンをすると、
メンバーの中の出来る子が、「天狗になる」「出来ない子を下に見る」「進度が遅れ迷惑そうな顔をする」
・・・などの症状が出る事があり、注意が必要です。
が、シニアレッスンの場合は大違いでした。
どの方もみんな、とにかく優しいんです。
もし弾けない人がいた場合でも、その仲間に対していやな顔をする人なんて一人もいません。というよりも、
「先生!○○さんは難聴なんです。先生の声がよく聞こえるそっちの席にした方が・・・。」
と、かばってあげたり、
「○○さんの家の楽器はこうだから大変なんだよ。」と代わりに弁解してあげたり、
・・・ああ、なんて優しい方達なのでしょう!
今までの復習をしようか?それとも先に進もうか?と進度を決める時、皆さんに意見を聞く事もあります。
そのような時、こんな答えが返ってくるのです。
「一番高齢の○○さんに決めてもらいましょう。」「賛成!!」
ああ、年齢を重ねた方って、どうしてこんなにも優しくこんなにも人を思いやる事が出来るでしょう?
私はシニアレッスンをしていると、とても暖かい気持ちになってくるのです。
さかいさん(75歳)
「心筋梗塞のため救急車で運ばれました。」
などと聞くと驚いてしまいますが、いつもにこにこお優しいさかいさん。
次に弾く楽曲は、皆で相談して選びます。
「愛の賛歌」と言えば・・・・・嬉し〜い!(^-^)
「ノクターン」と言えば・・・・わ、好きなんですぅ!
「乙女の祈り」と言えば・・・・わあ!憧れていたんです(^-^)
お顔がパーッと輝き、目は少女のようにキラキラ・・・。
本当にピアノがお好きなのだということがよく解ります。
私ももし70代になった時、彼女のごとく輝いていられたらいいなあ・・・。
それにしても、こんな素敵な笑顔を見せられては、
教える方も、何とか弾けるようにしてあげたい、応えたいと思うのが人間。
「教師の指導意欲を高めてくださる生徒」なのです。
よく「良い先生に出会えて、本当によかった。。。」という言葉を聞きますが、
私の場合は「良い生徒に出会えて、本当によかった。。。」なのです。
ながちゃん(71歳)
「よろこびの歌」の手話コーラスを、筑波大生に指導しているところ↑。
ながちゃんのテキストには、こんなおまじない→
が書いてあって、とてもピアノ熱心。
でも、それだけでなく地域の自警団長、小学校の評議員・・・色々な顔をお持ちで、いつも皆のために尽くしてくださっています。
ながちゃんの口から出た言葉の数々を紹介しますね。
・ホームコンサートで……
「ピアノに命かけて練習しました!」
・「60歳からは、VIP生活をしています。」
Vegitable Garden(家庭菜園)
Igo (囲碁)
Piano (ピアノ)
・ながちゃんにとって、ピアノとは?
………「僕にとってピアノは“男のお洒落”です。」
うーん、名言!!
みさちゃん(68歳)
ホームコンサートのお菓子を持ち回りで持参することになり、まず美佐ちゃん達のグループが担当。
私がその事を言い忘れていたら、全員の前に出て、
「こういうことになりました。今回は私達がしましたので、次回は他のグループお願いします。」
と、代わりにきちんと言ってくださったのです。(感謝)
「単なるコミュニケーション不足」「一言足りなかった為…」「ついウッカリ言いそびれ…」「その時うやむやにしてしまった為…」・・・などという些細な原因から生じる誤解やトラブルって結構ありますよね。
はっきり伝えておいた方が良いこと・ひとこと言っておいたほうが良いことは、きちんと伝えておく。
それが、相手に余計な心配や気まずい思いをさせずにすむ「思いやり」「親切」であり、
そんなちょっとした一言で、お互いにずっと気持ちよく過ごせるものだ。
・・・ということを、長年の経験でしっかり身につけていらっしゃるのだと思います。
この方は、ボーッと伊達に生きてきたのでもなく、
自分のやりたいように傍若無人に生きてきたのでもなく、
きっと、社会の中で周囲の人々とうまく調和をとりながら生きていらっしゃったに違いありません。
それまでの経歴も仕事も肩書きもあえて何もお聞きはしないのですが、
60年間どのように生きていらっしゃったのか?
その人の人生が解るような気が致します。
「年をとっただけで、中身の無い高齢者」にはなりたくありません。
私も60歳以上になった時、年齢相応の知恵を身につけ、
バックグラウンドなど何も言わなくとも、
「この人はきっと素敵な人生を歩んできたに違いない!」
と思われるようになりたいものだと、彼女を見ていて、切に思うのでした。
ようさん(64歳)
最初のレッスン日、皆さんに駐車場のこと(我が家は2台しか停められないという事)を言っておくのを忘れたので、きっと路上に何台も駐車することになるだろうと思っていました。
が!当日、うちの駐車場にも家の前の路上にも1台も駐車されていませんでした。中でもようさんは、5分位離れた公園の駐車場に停めて、そこから歩いてきて下さったとのこと・・・。
ああ、脱帽です。最初から尊敬を感じてしまいました。
こういう気配りというのは、やはり年齢を重ねていらっしゃった方にしか出来ない気がするのです。
その人がどういう人間か?「車の停め方」でだいたい解ると思うようになりました。
車椅子の姑が診察のため病院に行かなくてはならない日、「タクシーを使っての送迎・診察の付き添い」をヘルパーさんにお願い出来るようになって、私たち家族はどんなに助かっていることでしょう。
介護学校を出た女の子や男の子のようですが、本当に感謝しています。
ただ、「あら?」と思うこともしばしば。
ある時は…自分が乗ってきたRV車を家の前の路上にドーンと停めたまま何時間もいなくなってしまったり・・・。
ある時は…我が家の駐車場は2台分の広さなのですが、なんと2台分のド真ん中にまたがってデンと停めてあったり・・・。
単に「気が回らない」だけだろうと気にしませんでしたが、
シニアピアノのレッスンを始めたら、あまりの違いようにビックリさせられたのです。
さすが長く生きていらっしゃただけあって、ひろみーたの貧乏住宅事情を察することが出来たり、近所から苦情が来て迷惑かけないだろうかなどと配慮出来る・・・。やはり、人生の先輩です。
私がシニアレッスンを続けようと決断した理由の一つも、このように人間的に素敵な方達とずっと関わっていたいと思ったからかもしれません。
【HOME】 *許可を頂けた方から年齢の順に掲載しております。今後も続きますのでお楽しみに!